押入れ

初めて訪れたイルカの部屋は結構綺麗で、なかなか居心地がいい。入り浸ってしまいそうだとカカシは思った。

「それにしても、もっと散らかってるのかと思ってました。片付け嫌いって言ってたし」

「カカシ先生が来るから、急いで片付けたんですよ。だから、そのへんの押入れとか開けないでくださいね」

照れながら言われると開けたくなるのが人間心理。

「開けちゃえ」

「あぁ!」

「……」

薬局の前にあるゾウの置物に迎えられ、見詰め合う。

「まぁ……人の家を勝手にあさっちゃいけませんよね」

カカシは微笑みながら力いっぱい押入れを閉めた。

「改造して上下運動が可能になっております」

「人が忘れようとしてんのに、いらん説明せんでください」

「夜道でも安全なように、目玉が発光するようにもしてみました」

「あれを持ち歩いてる方が危険ですよ」

「俺の技術では上下運動が限界です。乗り物にしてやれなかったのが残念でなりません。あれに乗って夜道を走ることを夢見ていたのに、儚く散ってしまいました」

「捕まりますよ。ってか、俺なら確実に攻撃して粉砕しますね」

「防御力をどのように強化しようかも悩むところです」

「せんでいい! っつーか、もう忘れたいんですけど」

「攻撃はやはり鼻から嫌な粘液を出すのが効果的でしょうか」

「聞けー! 人の話を!」

そこでカカシは、ハッとした。

「開けないでって言ったのに、開けてごめんなさい」

「あっ、カカシ先生、お茶いかがです?」

イルカは何事もなかったかのように、湯飲みを差し出した。

家主の言葉を無視して部屋をあさってはいけないというお話。


2005.11.28

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