つまみ

「はい、カカシ先生」

風呂上りに手渡されたビールはよく冷えていて、カカシは上機嫌で口に含む。

「ところでカカシ先生、冷蔵庫に食べる物があまりないんですが、酒ばかりだと胃を悪くするので、これをどうぞ」

「何から何まですみませんねぇ」

ニコニコしながらイルカが差し出した食べ物に視線をやる。

「って、納豆がツマミになるかー!」

「枝豆だと思って食べればいいじゃないですか」

「枝豆は糸ひいてません」

「納豆だと思うから抵抗を感じるんですよ。一粒ずつ食べればあら不思議、ただの豆です」

「もとから豆だよ」

カカシの言葉を無視して、イルカはさらに力説する。

「それに納豆のネバネバは体にいいんです! 何とかって成分が何かに効くんです!」

「あんたの知識はいつも中途半端なんですよ」

「暴言吐きましたね?」

「真実とは、いつも悲しい現実をつきつけてくるものなんです」

「つまり、無知な俺に対する挑戦なんですね?」

「掘り下げて納豆の成分調べられても困るんですが」

「カカシ先生の体を心配したのに、何で俺がこんな仕打ちを受けなきゃなんないんですか」

「俺があんたに感謝して納豆を食べる、という未来に向かわせるための計算し尽くした発言だと認識しました」

「あなたの認識はどうでもいいです。冷蔵庫に納豆しかなかったという覆しようもない現実が目の前に!」

大げさな身振りで納豆を指差すイルカに、カカシがポツリと告げる。

「いらない」

「それじゃあ冷蔵庫に戻しておきますね」

イルカはそう言ってパックを手にすると、台所に消えた。

何となく出しただけか……。

カカシはそう思いながら、ビールを空にしたのだった。


2005.10.15

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