「イルカ先生、酒ひかえませんか? あんた太りましたよ」

ビールの缶を片手に持ったイルカの動きがピタリと止まった。

「現実を直視させる発言で俺を攻撃するあなたは悪です」

「飲みたい欲求に抗えないあなたも悪です。ってか現実直視しろよ」

そう言って、カカシはイルカの手から缶を奪った。

「飲みたいんじゃー!」

「叫んでも駄目です」

「飲みたいなぁ」

「可愛く言っても駄目」

「どんな風に頼んだらあなたは満足なんですか!?」

「飲むなって言ってんですよ! そもそも仕事に支障をきたしたらどうするんです。あなたが太っても体型を活かしきれるとは思えませんが」

「今の俺の職業は飲兵衛です。つまり問題なし!」

「あんたの発言に問題がありましたよ」

「飲みたいんじゃー!」

「話をループさせるのは禁止です」

「俺にどうしろと?」

「酒を飲むなって言ってんでしょうが。って、ループしてますがな!」

「カカシ先生もまだまだですねぇ」

なぜか勝ち誇った笑みを見せるイルカ。

「優位に立ったフリしても、この缶は返しませんよ」

そう言いながら缶を振るカカシに、イルカが悲鳴をあげた。

「一本しかなかったのにぃ!」

「一人で飲む気でしたね?」

「実は自分のがないからって拗ねてましたね?」

「別にぃ」

さらに振り続けるカカシはソッポを向いている。

「しょうがありません。それはなかった物として処理しましょう」

イルカは俯き、ちょっと間をあけて顔をあげた。

「っで、買出しはどっちが行きます?」

「どっちも行かねぇよ」

その直後、イルカの脳天に缶ビールが振り下ろされた。


2005.08.20

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