一発芸
別に祝い事がなくても、人は理由をつけて酒を飲むものだ。 居酒屋の一室で、上忍中忍入り混じっての宴会。 たんに酒好きの集まりである。 「お……俺は歌うぞ!」 酒のせいか、音程が滅茶苦茶だろうと大盛況。歌っている本人もノリにノッている。 「カカシ先生も何かやってくださいよぉ」 赤い顔をしたイルカが肩をバンバン叩きながら前を指差す。 「しょうがないですねぇ」 カカシは腰を上げて歩いていった。 「はたけカカシの一発芸、腹きり」 大歓声の中、カカシは一本の刀を右手に持ち、左のわき腹に添えると、ザシュッと躊躇なく一文字に切り裂いた。 血を流しながらバタリと倒れるカカシ。 ピクリとも動かない。 ゴクリと唾を飲む観衆の中で、イルカとアスマだけが冷静だった。 「アスマ先生、手当てお願いします」 イルカの言葉に、止血の薬を塗って包帯を手際よく巻くアスマ。 一分後、復活したカカシは青い顔で両手を挙げ、皆に拍手を強要した。 皆が皆「うわぁ……」というような表情をしている。 「では、うみのイルカ、毒薬一気飲みいきます!」 赤ら顔で懐から取り出した毒薬を飲み干した。 ゴフリと血を吐き倒れるイルカ。 ピクリとも動かない。 「アスマ、解毒薬」 言われるままに、アスマは薬を飲ませた。 復活したイルカは、やっぱり両手を挙げ、皆に拍手を強要する。 無言の拍手の中、アスマは言った。 「お前ら、一発芸の意味を取り違えてるぞ」 そのセリフに、観衆からは惜しみない拍手が送られたそうな。 2005.06.20 |