アイス

「カカシ先生、どうぞ」

イルカはそう言って、カップ入りのアイスを手渡した。

「抹茶ですかぁ」

一口食べ、無言でイルカの方を見た。視線を逸らして彼は黙々と食べている。

「処分したかったんですね、青汁アイス」

「ええ、よくお分かりで」

イルカはやっぱり視線を合わそうとせず、そう告げた。

「不味いです」

「食べ物を粗末にしてはいけません」

「面白そうだからといって、何でも買ってくるの止めてください」

「考えておきます」

「そうですか。ではとりあえず……」

カカシはアイスにフタをして、冷凍庫に戻した。

「食べきってくださいよ!」

眉間にシワをよせ、怒ってるんだか悲しんでるんだか分からない顔でイルカが叫んだ。

「無理です、ごめんなさい!」

カカシは財布を持って玄関に向かって走り出そうとしたが、イルカに足を掴まれた。

「どこ行くんです?」

「アイスを買いに」

「アイスがあるというのに新しい物を買いに行こうとするなんて」

「たかがアイスなのに……」

イルカの目がキラリと光った。

「これが……これが上忍と中忍の財力の差というやつですか!?」

「いや、性格的な問題だと思いますよ。食べ物残しても平気な人が俺で、そうでない人がイルカ先生」

カカシは指を差しながら説明を加えた。

「俺は……俺は一人の人間としてあなたと接してきたつもりです。階級差はあれど、それでも一人の男として……」

「相変わらず話を聞かん人ですねぇ。アイス一個でえらく男前な発言しちゃってるし」

「ちゃんと俺の話を聞いてください!」

「あんたが言わんでください」

「俺は珈琲のかき氷が良いです!」

「あー、はいはい」

いるのかよ、なんてセリフは吐かない。だっていつもの事だから。

カカシはこうして夜の買い物に出かけたのだった。


2005.06.01

close