マッサージ

「カカシ先生、お願いがあるんです」

「なんでしょ」

「腰……揉んでいただけませんか?」

「いいですよ」

カカシは手をワキワキとさせながらイルカに近付く。

「何と言いますか……寄るな」

「近付かないとマッサージなんてできませんよ?」

早く寝転がってくださいと言うカカシを睨みながらも、両腕を枕にしてうつ伏せになった。そしてマッサージが始まる。

「気持ちいいですか?」

「かなり」

「あっ……」

カカシがそこで言葉を止めた。

「どうしました?」

尋ねると、カカシは笑いを含んだ声で言った。

「イルカ先生、今エロい想像しましたね?」

「してねぇよ」

沈黙。

「ソフトに揉みだすな」

イルカは低い声で注意した。

「話の流れ的には、ここで楽しい展開になるはずなんですがねぇ」

「マッサージしてもらってるだけなんですがねぇ」

返すイルカの声はやっぱり低かった。

「惚れてる相手とのスキンシップに反応を示さないフリをしているんですか?」

「そろそろ止めないと、残酷描写が入りますよ?」

「それは誘い文句ですか?」

「会話してぇ」

イルカの握り締めた拳が震えた。

「冗談ですよ。本当はこんなのんびりした日常が好きなんです。あんたとこうして何でもない会話を交わして、それが幸せなんですよ」

「カカシ先生……」

「って嘘だ! 言葉にしてみたけど納得できねぇ! 欺瞞だ、欺瞞! 自分騙して何が楽しいんだ!」

ガスッ。

再び沈黙が訪れた。イルカは後頭部を、カカシは顔面を押さえている。

「とりあえず、そこに正座してください」

「はぁい」

カカシは背筋を伸ばしてイルカと向かい合った。

「何か言いたい事は?」

「マッサージは素人がやると、よけいに痛めますよ?」

カカシの言葉にイルカは脱力した。

会話が成立しない事に対してなのか、それとも痛めるのを分かっているなら願いを受け入れるんじゃねえと思っていたのかは不明だが、とりあえず、イルカは大きな溜息を一つついたのだった。


2005.05.28

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