カニ

カニが安かったので本日は鍋にする事にした。

旨い。でも食べにくい。

イルカは悪戦苦闘し、周りを散らかす。

少し疲れたので休憩に入ったイルカは、何気なくカカシの手元を見た。

「カカシ先生、俺覚悟を決めました」

「はぁ?」

目線は下のまま、イルカはポツリと言った。

「ずっと一緒にいましょう」

「あんた、今覚悟とか言ってませんでした?」

胡散臭げな目つきでイルカを見るも、当の本人は気付いていない。

「人生の決断なんです。受け止めてください。男の子同士だし、色々問題はあるでしょうが、本気なんです」

イルカの表情は真面目で、声は普段よりも低い。

「今の会話で突っ込む場所は『男の子』発言でしょうか?」

イルカはバンと卓袱台を叩いた。皿の上で食べられるのを待っているカニ達が飛び上がる。

カカシはジッとイルカを見つめた。イルカもまた、カカシを見る。

「元々別れる選択肢なんてないじゃないですか」

カカシは彼が本気である事を悟り、ニッコリと微笑んで言った。

心底嬉しそうなカカシに、心底嬉しそうなイルカ。そしてイルカの手にはカニがこんもり乗った皿。それをニコやかにカカシに差し出している。

「カニの身ごときで人生の決断をすな!」

カカシがカニの身を取ってやったのかどうか、それは二人のみぞ知る。


2005.04.16

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