隣の人

イルカ先生の家に行ったら留守だった。

さて、どこでご飯を食べようか。

カカシは居酒屋の多い通りをぶらぶらと歩いていた。

──と、前方に見えるはイルカ先生。

横には女がいる。どうやら二人で酒を飲みに行くようだ。

「好きだー!」

ガバリと背後から抱きついてみた。

「いきなり何すんだ、あんたは!」

軽く殴られた。

「っで、隣の彼女はどちら様?」

「彼女は妹です」

「あぁ、妹さん。はじめましてはたけカカシです」

ショートカットの女は呆気に取られて口をポカンと開けたまま動かない。

「っつーか妹じゃねえ! 考えるまでもなく嘘じゃないですか!」

「さっき思い付きました」

「あんたの思考回路どうなってんです?」

「残念ながらお見せできません」

「当たり前です」

カカシは女に視線を移した。女は条件反射で笑うが、微妙に笑えてない。

「紹介しますね」

そう言ってイルカは続けた。

「名前は知りません」

沈黙が訪れた。誰も喋らない。時間だけが過ぎていく。

どれほどそうしていただろう。イルカがスッと右前方を指差した。

「山田さんの家は、そこの八百屋を曲がった左手です」

「……あ、すいません」

女はハッと我に返り、頭を下げて去っていった。カカシはその背を、なぜだか分からないが静かに見送った。隣でイルカが「どういたしまして」と手を軽く振っている。

「……何か食べて帰りましょうか」

カカシは少しばかり疲れた表情で、そう提案したのだった。


2005.04.09

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