ご飯を炊こう

食卓に黒いご飯があった。

「黒米?」

カカシは微妙な表情で尋ねた。

「いえ、白米です」

イルカは真顔で答え、カカシに席をすすめる。

「……箸を持つ前に尋ねておきたいんですが、なぜこのような黒い米ができたのでしょうか」

「炊飯器が壊れまして鍋で炊いてみようと思ったんです」

イルカはそこで息を大きく吸い込み、声の調子を変えて喋り始めた。

「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣いてもフタとるな」

そこで沈黙が訪れた。

「はぁ……」

とりあえず相槌を入れるカカシ。「これを参考に炊き始めたんですけどね」とイルカは話を続けた。

「意味が分からない!」

「分からんなら参考にするな!」

「赤子なんぞ、ここにはおらんわー!」

「いてたまるか!」

「これだと一生鍋の中身は封印状態だー!」

「アホか、あんた!」

イルカはピタリと動きを止めた。どうやら心外だったようだ。

「あのね……その言葉の意味はね」

カカシは説明をしようと口を開いた。

「まぁ、食べ物を粗末にするのも何なんで、食べてください」

「聞けよ、説明」

「あぁ、ご飯が冷めてしまいます」

どうやら本気で聞く気がないらしい。

「温かかろうが冷たかろうが、食えませんよ」

「雑炊にしますか?」

「そんな次元の問題じゃないと早く気付いてください」

イルカは腕を組み、考え込んだ。そしてポツリと言う。

「カカシ先生、明日、お弁当作ってあげます」

「入れる気満々だろ! そしてあんた、本当は自分で食べる気ないだろ!」

「俺は食べてくださいと言った覚えはありますが、自分で食べるとは言ってません」

その言葉に、カカシは優しく微笑んで、黒い米を廃棄処分にしたのだった。


2005.03.22

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