人形

「イルカ先生、何してるんです?」

静かだと思ったら、粘土をこねている。

「これね、焼いたら陶器みたいになる粘土なんですよ」

「ふぅん」

湯呑でも作るんだろうか。カカシはそう思いながら本に視線を戻し、そのうち眠たくなったので先にベッドに入った。

次の日も、その次の日も、イルカは何やら黙々と作っていた。今日は筆を手にして色を塗っている。湯呑にしては時間がかかり過ぎじゃないだろうか。

「いったい何を作っているんですか?」

思い切って訊いてみる。

「ちょっとカカシ先生を」

「……は?」

「だからカカシ先生」

「何で?」

「人間の行動の全てに意味を求めるのは、いかがなものかと思います」

「要するに意味はないんですね」

「男に自分の人形作られてるってのに冷静ですね」

「まぁ、実害ないし」

言ったカカシの側でイルカが「完成」と呟いた。

「見てください!」

そこには、イルカの掌の半分くらいの大きさをしたカカシがいた。

「どこの職人ですか、あんた」

似過ぎているカカシ人形の感想を述べる。

「……さすがに毛穴までは再現できませんでした」

「残念そうに言うな」

カカシはそう言いながら、人形を受け取った。

「それにしても、よくできてますね」

「これにはね、ちょっとした仕掛けがあるんですよ」

イルカはカカシ(人形)の頭を取った。

「脳みそです」

「気色の悪い物を作るな!」

「お次にここ!」

イルカは腹の辺りにあったへこみに爪をかけ、開く。

「臓物です」

「リアルに再現しすぎだ!」

怒鳴るカカシにイルカが「あぁ!」と慌てた声を上げた。

「ど……どうしました?」

「臓物はまだ絵の具が乾いてないんで。ムラになると嫌なのであまり人形を動かさないでください」

「やかましい!」

怒鳴りながらも怒られると嫌なので、カカシは極力動かさないようにしながらイルカの掌にそれを返した。

「本当に、あんた何でそんな物作ったんですか?」

「カカシ先生が長期任務についたら……寂しいじゃないですか」

少し視線を落としたイルカに、カカシは優しい笑みを向ける。

「臓物作った時点でネタに走りましたよね?」

「愛で方は人それぞれです!」

「人の話を聞かんか! 本人いないからって、人形愛でるな! 明らかにヤバイだろうが!!」

「そんな偏見に満ちた意見を述べられるとは思いもしませんでした」

「セリフだけは常識人だな、おい」

「なんと言われようと、俺はこのカカシ人形が気に入ったんです」

「そうですか。それなら俺も作りますよ、リアルイルカ人形」

目を見開き、イルカはカカシを見た。

「変態?」

「変態はおのれじゃ!」

カカシの叫びは、静かな夜の闇に消えていった。

カカシ人形がどうなったか、それはイルカのみぞ知る。


2005.01.29

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