髪の毛

ある日、カカシがイルカ宅に行くと、家主がアフロになっていた。

「……」

カカシはあえてそれには触れず、「今日寒かったですね」なんて言葉をかけた。

「驚きました?」

「またソウルフルな頭してますね」

どうしても感想が欲しいのか、この人は。

カカシは諦めて、イルカの話に付き合う事にした。といっても、この時点で会話も終了だろうが。

カカシは苦笑しながらイルカの髪をむんずと掴み、そして引っ張る。

取れない。

「……はい!?」

「地毛です。痛いです」

「何してんですか!」

「髪型を変えてみました」

「誰が冷静にそんな事を説明しろと言いました?」

「髪型変えたんじゃー!」

「取り乱せとは言っとらんわ!

頭をはたいたが、髪の弾力で撥ね返された。

「防御力に優れた頭となっております」

「えぇ、そのようですね」

カカシは歪んだ笑みを見せた。

「直毛の髪が伸びてくると、きっとブロッコリーのような頭になると思われます」

「その事に対する抵抗はないんですか?」

「残念ながら」

「本当に残念ですよ」

カカシは肩を落として元の生活へと戻る努力を始めた。

次の日、イルカが起きると、縮れた毛先が肩の辺りに見えた。

頭に手をやれば、明らかにボリュームを失くしている。

「俺のブロッコリー計画が!」

諦めたフリをして夜中に必死で髪を梳き続けたカカシは、イルカの横で満足そうな笑みを湛えながら眠っていたそうな。


2005.01.24

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