珈琲

カカシは布団の中で悩んでいた。

起きるべきか、それとも布団の中に留まるべきか。

昨日の晩、イルカの機嫌は大層悪く、それを引きずっていたら、とばっちりがくるだろう。

なんて大人気ないんだ、イルカ先生。

その機嫌を伺う自分は非常に子どもっぽいか、他者を気遣うフリをして保身に走る大人か微妙なところではあるが、カカシは悩んでいた。

「……カカシ先生」

どうにも判断しがたい声が台所から聞こえてくる。

「昼ですよ。起きてください」

あぁ、起きたくない。でも起きなきゃならない。

カカシはノロノロと台所に向かった。

「はいどうぞ、……コーヒーです」

部屋を満たす暖かな香は、エスプレッソのそれによく似ている。ミルクのタップリ注がれたコーヒーは、好みではないが嫌いじゃない。

──いつものイルカ先生だ。

カカシはホッと胸を撫で下ろし、コーヒーを口に含むと──吹き出した。

「なんですか、これはぁぁ!」

「言ったじゃないですか。ブラジルコーヒーです」

「コンデンスミルクがダダ甘いわ!」

「サービス増量中です」

「無駄なサービス精神を出さんでよろしい」

唇の片端をつり上げ、小刻みに肩を揺らしながら奇妙に笑うイルカを見ながら、

──いつものイルカ先生だ。

カカシは色んな意味でそう感じずにはいられなかったそうな。


2004.12.29

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