捕まえよう

「我々は里を守る木の葉の忍」

「はぁ」

イルカは話があると言われ、カカシの前で正座していた。

「さぁ、下着泥棒を捕まえに行きましょう!」

「まったくもって『さぁ』の意味が分からないです。あと、夜は冷えるので嫌です。指先が辛いんですよ」

「この寒い中、俺を一人で放り出すんですか!?」

「個人的に頼まれた事に俺を巻き込まんで下さい」

「さむいー! 一人はさむいー!」

「二人でも寒いですよ。被害は最小限に抑えるのが良いかと」

カカシは尚も寒いと繰り返し、時折イルカの方をチラリと窺う。

「……まったく、何でそんな事引き受けるかなぁ

「実は珈琲おごってもらっちゃいまして、その代わりに」

「はたけカカシ、安っ!」

「寒くて……持ち合わせがなくて……温かそうな湯気が俺を誘惑したんです」

カカシは口元を手で押さえて悲痛な表情を浮かべた。

「はいはい、行きましょうね」

拒否しても連れて行かれるのだろうと観念したイルカは、マフラーを首に巻いた。

 

「こちらが今回の依頼者です」

カカシはサッと紅に手を伸ばし紹介した。

「いや……あの……ご自分で捕まえてください」

イルカは本気で思った事を口にした。

「変態は勘弁」

なるほど。係わり合いになりたくないという気持ちは分からなくもない。

「さて、具体的にどうしましょう。現行犯で捕まえるのが一番でしょうが」

「まず予防策をと思いまして、男物の下着を吊るしてみようと思います」

カカシは真面目な顔で真面目な事を言った。

「取り出したるイルカ先生の下着をここにチョイと引っ掛ける……」

イルカの蹴りが背に入る。

「下着泥棒を捕まえてみました」

「もう一人の方もよろしくね」

動じず、紅は珈琲を片手にそう言った。

「基本中の基本なのに……」

カカシは変にピクピクしながら呻く。

「俺の下着の方を取られたら怖いじゃないですか」

「私のプライドずたぼろの上、魂が揺さ振られるほどの恐怖ね」

「カカシ先生の案は却下して、とりあえず見張るとしましょう」

そして待つ事一時間、案外アッサリ下着泥棒は捕まった。

「さぁ、夜道を散歩しながら、こいつをつき出しに行きましょう!」

「もしかして、俺と散歩したいから引き受けたなんて言わないでしょうね」

「だって、こんな事でもないとイルカ先生、寒いって言って外出てくれないじゃないですか」

イルカは溜息を一つ。そして「まぁ良いですけどね」と言った。

「デートオプションが最悪ね、カカシ」

男二人が仲良くする様を見せ付けられる下着泥棒に少しだけ同情しながらも、ある意味これで反省するだろうと思った紅だった。


2004.12.09

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