十円玉で潰すモノ

「カカシ先生、聞いてください。ガングリオンがなくなったんです」

「何、それ」

「関節辺りにできるシコリですよ。それがですね、今日何気なく触ってみたら、なかったんですよ。不思議ですねぇ」

「どこにシコリがあったんですか?」

イルカは真顔で即答した。

「きん●ま」

「どこ落としてきたー!」

思わずしゃがみ込んだカカシの顔にイルカの膝がぶち当たる。

「すみません。スキップしようかと思って」

シレッと答えるイルカに、カカシは顔面を押さえて「暴力反対」と呻いた。

「奇遇ですね、俺もそうなんですよ。暴力はいけません。しかし、そこから友情が芽生える場合もあります。そう、例えば今。こんな時は二人で笑いましょう。喧嘩の後はお互いの顔を見て『何で俺達喧嘩してたんだろうな』って腹を抱えて笑うんです」

「顔面蹴られて愉快に笑えるか!」

「誰も愉快に笑えなんて言ってませんよ。むしろ最初は苦笑くらいが丁度いい」

「やかましい! 一方的な暴力を喧嘩にすり替えて、自分の罪を軽くしようとしやがって……」

「そこのはたけ!」

イルカはビシッとカカシに指を突きつけた。

「なっ……何ですか?」

勢いに、思わずカカシは仰け反る。

「言葉が汚い」

「あんた、会話が全部ズレてんですよ!」

「そこが、ほらっ……個性?」

「何でもそう言えば済まされると思ったら大間違いです。あと疑問形にすな」

「カカシ先生、『る』が抜けてますよ。正しくは『するな』でしょう? 言葉の乱れは心の乱れですよ」

「乱れまくってるわ!」

鼻が痛いのか、さすりながらカカシが怒鳴った。

「……あれぐらい避けろよ」

イルカはポツリと漏らした。

「言いたい事はそれだけか!」

直後、狭いイルカ宅で追いかけっこが始まった。

どうやらイルカは最近この展開が好きらしい。

何故なら、逃げ回っている時の表情が心底楽しそうだから。

追いかけっこは、イルカが「飽きた」と急停止して、その背でカカシが鼻を強打するまで続いたそうな。


2004.11.22

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