指南

「男前だと噂のカカシ先生にお願いです」

「あらたまって何です?」

センベイをかじってくつろいでいたカカシの正面に座り、イルカが真剣な表情をする。

「男らしさの秘訣なるものを教えていただきたいんです」

「大丈夫大丈夫、イルカ先生男だよ。俺がよく知ってるから」

冷たいお茶を一口飲んで、カカシが手をヒラヒラさせた。

「そんな周知の事実はどうでもいいんです」

カカシの手からセンベイとお茶を奪い取った。

「何かあったの?」

「これといって衝撃的な事件はないんですけど、女性職員が『カカシ先生って男前よね』って話しているのを聞いたんで、ちょっと興味を持ちました」

カカシは手近にあったペンでキュッキュッとイルカの顔に何かを描く。

「このジェントルなチョビヒゲがあれば、明日からあなたも男前!」

「それが油性だって知ってました?」

「あっ……本気でごめんなさい」

まぁいいですけどね。そう言ったイルカに「先生優しい」とカカシが呟いた。

「優しいなんてセリフは結構です。ですから男前の秘訣を」

「んー、クナイで人間ポンプ?」

「誰が一発芸教えろって言いましたか。たんに見たいだけでしょう」

一瞬の沈黙。

「……そのヒゲ素敵」

「どうでもいい言葉で誤魔化すな」

「それじゃあ、本気で男前講座を始めるとしましょう」

ゴロリと横になっていたカカシが身体を起こし、姿勢を正して座りなおした。

「イルカ先生」

「はい」

真剣なカカシの態度に、イルカの気も引き締まる。

「インチキマジシャンみたい」

とりあえず殴ってみた。

「本気で教えてくれる気あるんですか?」

イルカのセリフに、カカシは「んー」と唸った。

「それよりお腹減りました」

イルカの目がカッと見開かれる。

「夕飯の買い物忘れてました」

そう言って、そそくさと買い物に出かけた。

「潔くて、ある意味男前です」

かじりかけのセンベイを手にしながら、チョビヒゲを物ともせず外出するイルカに、カカシは本気でそう呟いたのだった。


2004.08.22

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